シャレは一線を超える
おそらくこのセッションに参加したみなさんは得した気分に浸ったであろう。まさか会場の非常口の一つが人格を持って数奇な運命を辿ろうなど予想しまい。嫉妬だ。いやそんな楽しいいたずらは大歓迎。氏は冒頭にこう説いた。「環境には無限の意味が込められている。人はその人なりにその意味を捉えている。デザインに意味を込めようとしてもしようがない。人間を含む環境という入れ子の中に情報の美が込められている」と。講義の最後に参加者を沸かせた非常口の仕掛けも、非常口という意味のあるデザインを無意識に捉え直して、環境に溶けていた情報を異なる意味に変換したものではないか。モノの使い手、情報の受け手というものは意味をいちいち考えない。作り手、発信者は意味を付けて押し付けたがる。氏はそこにポイントを見い出して解釈してくれた。受け手が無意識にやり過ごす意味。それを作り手は意識的に感覚に取り込んで新たなモノを提案することが重要である。紹介された家電やファッションなどのプロダクトが一見シャレに見えて実はそれらが本質的な意味を兼ね備えて世に現れる理由が深澤氏自らの言葉で解釈された。
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