デザイナーの強い残り香 アイデンティティ
服に付いているタグ。もし何も記されていなければ、何を思うだろう。メーフィス氏は、ここに1つのアイデンティティの形をみる。そこには、デザイナーのブランドに対する強烈なアンチテーゼが内包されている。つまり真っ白なタグの使用が、デザイナーの態度表明になり、アイデンティティになるのだ。「許可なしに公共空間にポスターを貼り、スペースを占拠することも、セックスピストルズの反政府的なメッセージも、広い意味でのアイデンティティになりうる」と氏は続ける。
次に自作品を紹介。アイデンティティを模索した事例に多くの閃光がたかれた。その中でも目を引いたのが、独特な会社案内。オランダでは英語も公用語のため、会社案内は2種類必要。同じフォーマットで2冊作るのが通例だが、氏は相棒のデュールセン氏と分担で作業。全く違う個性の2人が作るので、2つのアイデンティティをもつ会社案内が出来上がる。少しの遊び心を持って、視点を変えることによりアイデンティティは表出するのだ。氏は最後にこう締める。「恵比寿のマジックが置いてあるトイレに行って、落書きしてみたいね。」そうなのだ、アイデンティティはこんな所にも表れ、同時に新しいコミュニケーションの可能性も隠されているのである。(是)
|