人と楽器の間にあるもの
太鼓を叩く。振動は音となって空気を震わせ、触覚を通じて叩いた者へ返ってくる。これまでに誕生したさまざまな楽器を紹介しながら、氏は楽器が常にインタラクティブなものであることを説く。弾き手はフィードバックを感じることによって、楽器と一体化されていることを感じているのだ。
氏はテルミンを実際に演奏。舞台中央に据えられた機械のアンテナに手をかざすと、ボワーンとなんともいえない音が鳴り響く。氏は指揮者のように構え、右手を小刻みに、左手をゆっくりと空中で動かす。一般的な楽器とは似ても似つかないその演奏法から生み出される不思議な音色に、聴衆は魅了された。
人と楽器の、現代の科学では説明のつかない一体感を氏は強調する。そしてそれは相手が楽器の場合のみならず、あらゆるコミュニケーションにおいて不可欠なものである。科学により生まれた電子楽器という機械が、科学で解明できない不思議を認識させてくれた。(久)
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