アムリック・カルシ(UN-HABITAT)、ニクラス・スヴェニンセン(UNEP)
モデレーター:カレン・ブリンコー(デンマーク)

世界を良くするデザインを

「誰も来ないかと思ったわ!」というブリンコー氏の言葉を裏切り、会場は満席。地球環境問題への関心の高さが伺えた。前半のプレゼンテーションを行ったカルシ氏は、世界は膨れ上がっているにも関わらず、生態系は成長していないことを指摘。貧しい国から富める国へ、未来から今へという消費の流れを止めなければ、環境はさらに破壊されこの世界を持続することは不可能だと述べた。だからこそ私たちはクリエイターとして、消費者として、意識を変えなければならないと。確かに広告は商品を売るという過程で力になってきた。しかしこれからは、ビジネスが社会責任であることを自覚しなければならない。消費のコントロールを考えなければならない。「皆が敗者になれば、皆が勝者になれる」。氏の言葉に会場からは大きな拍手が湧いた。続くブリンコー氏もデザイナーが今の世界を作ってきたことを認め、今後は社会を良くする方向に力を使いたいと呼びかけた。たとえば企業のブランディングを担うとき、ただ格好いいマークや目を引くビジュアルを作るのではなく、企業の行動の仕方、あるいは企業そのものを育てて欲しいと提案。企業が社会的責任を負うとき、同時にデザイナーにも社会的責任があると、クリエイターの立つべき位置を示した。氏は社会・経済・環境の調和がとれたとき、初めてサスティナブル(持続可能)な世界が生まれると語る。そのためにデザイナーが必要だと断言する。さて、あなたのデザインは世界を幸福にしているだろうか。(吉)

ジョナサン・バーンブルック(英)、後藤繁雄(日)

影響下での影響力 

ブッシュ大統領にチョビヒゲ。そのヒゲはバーコード。付いた肩書きは「コーポレートファシスト」。これを筆頭にスクリーンに映ったのは皮肉と批判に満ちたビジュアルの数々。カナダに本拠地を置く広告集団「アドバスターズ」は商業主義に飲み込まれた社会に「文化的抵抗」を行い続けるNPO団体で、バーンブルック氏もその仕事に関わっている。グローバリゼーションは拝金主義の政府や企業のパワーを増大させ消費主義を助長する。人々そしてわれわれの文化は望まなくともその影響下にさらされる。広告に目を向けると企業のブランド戦略が優先でプロダクトや広告のクオリティ、デザインは二の次にされている現状。クリエイタ−たちは「自己保身のために嘘をつく企業のためにデザインを使われる」存在に甘んじている。今求められるデザイナーの役割は「真実」を伝えることだとバーンブルック氏は説く。たしかにアドバスターズの仕事の60%はクライアントのないフリーなものだという留意点などはある。しかしクライアントがあろうがなかろうが表現方法やその技術に違いはないという。真実を伝えるためのアイデアやコミュニケ−ションが人々の意識に変化をもたらす力を持っている。(池)

[ライター] 池端宏介/是方法光/坂本順子/紫牟田伸子/長谷川直子/久永理/武藤櫻子/吉岡奈穂/Helmut Langer/Maggie Hohle/Nicole Rechia/Trysh Wahlig/Gitte Waldman/Robert Zolna
[撮影] 浅井美光/勝田安彦/水谷文彦