福田繁雄(日)、オマー・ヴルピナーリ(伊)、シーモア・クワスト(米)

バカバカしいことへの信仰

クワスト氏の急遽参加が決まった本講演は超満員。座れなかった人が真ん中にあるステージを取り囲む。人間の「笑いへの渇望」はある種異様な雰囲気を創出した。
聴衆は「やられた!」と思い、スピーカーは「してやったり!」と悪戯っぽく笑う。3氏がそれぞれプレゼンテーションする中、これがスピーカーと聴衆の間で取り交わされた共通の会話だ。福田氏は、遠近法を無視した作品を見ながら「芸術家がこんなことするなんて」と笑い、クワスト氏は「どんなものでも風刺する材料になる」と説いた。「FOOL」であることを信仰するヴルピナーリ氏は、その強烈なヴィジュアル作品で多くの笑いを誘った。
一見、バカバカしいこと。しかし、作者が込めた秘めたる本質に気付けば受け手の胸にグサリと刺さる。この過程こそがコミュニケーションをスムーズにするのだ。終演が迫り、福田氏の悪戯(いたずら)っぽい笑みが再び大輪の花を咲かす。取り出されたのは盆栽。「食べてみて!」と両氏に迫る。実はこの盆栽、チョコレートだったのだ。「笑いには時代やその国の文化が表れる。当然、日本にも見方を変えれば、面白い発見はあるんだよ」という福田氏のメッセージだ。終了後、盆栽の周りに多くの聴衆が詰めかける。福田氏のユーモアは確実に伝わり、聴衆との意志疎通が成功した瞬間。ユーモアの力はここに堂々と証明された。(是)

いとうせいこう(日)、宇川直宏(日)

デザインとダウンタウン?!

いきなり、不可解な行動をとる男のフィルムが流される。上映後、男が投げられることだけに命を捧げる「投げられ屋」だと宇川氏がネタばらし→大爆笑。まさに「?」が「!」に変わった瞬間だった。構造を理解すると笑いが起きる。表現者が普遍的な何かを構築する際、宇川氏は「トレンドとの距離の取り方」が必要だと語る。「過去のものの何を残し、何を捨てるかという編集能力が笑いにもデザインにも必要」と、いとう氏が間髪入れずに続ける。そして話は、ダウンタウンのDVDの話へ。「売れてるねぇ。昔のコントなのに」とコントを鑑賞しながら宇川氏。何故か?いとう氏が仮説をたてる。「購買者のアイデンティティの1つとしてコントが存在しているからでは?」と。つまり、日々消費されていくはずの表現が、時代の刻印を押されているのにもかかわらず、より崇高なものに昇華したのだ。ダウンタウンにトレンドを操る実例を見いだすのも、まさにご両人ならではのセンスである。(是)

[ライター] 池端宏介/是方法光/坂本順子/紫牟田伸子/長谷川直子/久永理/武藤櫻子/吉岡奈穂/Helmut Langer/Maggie Hohle/Nicole Rechia/Trysh Wahlig/Gitte Waldman/Robert Zolna
[撮影] 浅井美光/勝田安彦/水谷文彦