バカバカしいことへの信仰
クワスト氏の急遽参加が決まった本講演は超満員。座れなかった人が真ん中にあるステージを取り囲む。人間の「笑いへの渇望」はある種異様な雰囲気を創出した。
聴衆は「やられた!」と思い、スピーカーは「してやったり!」と悪戯っぽく笑う。3氏がそれぞれプレゼンテーションする中、これがスピーカーと聴衆の間で取り交わされた共通の会話だ。福田氏は、遠近法を無視した作品を見ながら「芸術家がこんなことするなんて」と笑い、クワスト氏は「どんなものでも風刺する材料になる」と説いた。「FOOL」であることを信仰するヴルピナーリ氏は、その強烈なヴィジュアル作品で多くの笑いを誘った。
一見、バカバカしいこと。しかし、作者が込めた秘めたる本質に気付けば受け手の胸にグサリと刺さる。この過程こそがコミュニケーションをスムーズにするのだ。終演が迫り、福田氏の悪戯(いたずら)っぽい笑みが再び大輪の花を咲かす。取り出されたのは盆栽。「食べてみて!」と両氏に迫る。実はこの盆栽、チョコレートだったのだ。「笑いには時代やその国の文化が表れる。当然、日本にも見方を変えれば、面白い発見はあるんだよ」という福田氏のメッセージだ。終了後、盆栽の周りに多くの聴衆が詰めかける。福田氏のユーモアは確実に伝わり、聴衆との意志疎通が成功した瞬間。ユーモアの力はここに堂々と証明された。(是)
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