形を消した建築、現象としての建築
グラフィックデザイナーが多数を占める今回のVISUALOGUEの中で、建築家の対談はそれだけで興味深いものであった。まず、隈氏は「建築を消す」という独創的な試みについて語った。たとえばサイバーグラスで森を眺め、実際の森から情報を受取る建築。山の頂上をカットし、トンネルを埋込んだ建築。いわば雄的でなく、雌的な建築。それらを模索しているうちに氏は、「形は消せるけれど物質は消せない」という結論を導きだした。そしてそれこそが、コンピュータ社会の中で可能な建築のアドバンテージではないかと。その結果、竹の家や土壁の美術館など、物質性に明確に焦点が絞り込まれた素晴らしい建築を氏は創りあげた。
一方、妹島氏も形よりも重要なことがあると語る。それは建築が生まれる場所であり、作られる状況であり、すべてを含めた現象であると。氏がオランダで進行中の湖上の劇場とカルチャーセンターは、小さな部屋が平行に存在し、景色がいくつも重なって大きな建築になるような手法が取られ、まさに場所性や現象的要素が面白く絡まっている。と同時に氏は、場所の影響を受けながらも、場所に縛られず自由でいたいとまとめた。一般的な建築の概念がくつがえされる新鮮な講演であった。(吉)
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