デザインを通して私達にできること
4日間に渡り、ここ名古屋で開かれた世界グラフィックデザイン会議。その会議を締めくくるデザイン・フォー・ザ・ワールド。体調不良のため、急きょ会場に来ることができなかった栄久庵氏に代わりピータース氏が講演を勤めた。
その中、優れた貢献を果たしたアン・サンス氏とキュー・リーメイ・ジュリア氏の両氏にICOGRADA会長賞が贈られた。キュー氏は多くの人が携わってこその結果であり、一人の人間が称えられるのは好きではないと、トロフィーを受け取るのを辞退した。
今、世界は「戦争、疾病、自然破壊、飢え、汚染……」など難しい問題を抱えている。私達を取り巻く環境の多くは人間の手で作り出されてきた。その環境に対してデザインができることはなんであろうか。それは、消費社会のニーズに答えるデザインを作り出すことではない。真のデザインの可能性を模索し、もっと視野の広いニーズに応え、問題を解決していくことなのだ。
「人生は一度きり。何に使うべきかもう一度考えてみてください」とのピータース氏の閉会の言葉が印象的であった。
情報化が進み、物事が多様化し、選択肢は無限に広がる。その中で、デザイナーはデザインの本質を見い出さねばならない。デザインの本質とは一体何なのか。その答えは簡単には出ないであろう。しかし今回の会議で、その答えのきっかけとなる「種」がまかれたのではないだろうか。その種を慈しみ、育て、次世代に繋がるデザインの花を世界中に咲かせる。それができるのは、諦めず、希望を持ち続ける私達ひとりひとりなのだ。
次回デザイン会議は2005年、北欧4ヵ国にて開催される。(櫻)
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